アニス


甘ったるい声でジェイドは彼女の名を呼ぶ。
それは実に不可思議な魔法。
自分の中の熱が上がるのをアニスは感じた。
でも、それを隠して怪訝な声を出す。


何ですか?


返事を返したと同時にジェイドが笑う。
くつくつと滅多に見せない笑い方で。
アニスはまるで見透かされたようで恥ずかしくなったが、それと同時に怒りもこみ上げてきたのを感じた。
どちらも体を熱くする要素しか含んでいなくて、どうしようもなく熱くなっている自分を子供っぽいとどこか冷静な自分が心の中で呟く。
でも、そんな風に思いながらもアニスは自分の中の熱を冷ます方法を知らなかった。
どうしようもない自分の気持ちよりも、意識を現実に戻そうとアニスは思った。
意識を戻す。
すると、ジェイドはアニスの顔をまじまじと見ていたことに気付いた。
また、アニスは聞く。
何ですか、と。
するとジェイドはさらりと真顔で聞いた。


貴方は私が好きですか?


は…?


顔がすでに赤くなっていて良かったとアニスは思った。
ジェイドはアニスの様子を伺いながらため息をひとつもらした。


アニス


また、甘ったるい風にジェイドは彼女の名前を呼ぶ…。
子供の自分に使うよりも、もっと自分のことを好きな女性に使えばいいのにとアニスは思った。
だから、それをそのまま口にした。


大佐…じゃなかった。中将、子供にそんな甘ったるい声を使わずにもっと好きな人とかに使えばいいんじゃないですか〜?


使っていますよ


しれっと応えるジェイドに今度はアニスがため息を吐いた


そうじゃなくて…その、好きな人だけに使えばいいじゃないですか…


そうでなくてはこちらが虚しいし、勘違いしそうになるんですよと心の中で付け足しながら。


だから、使っているでしょう?


そうでなくて〜、好きな人にだけ…だけってのが重要なんですよ〜


おや、わかりませんか?


アニスは小首をかしげて少し俯いて考え込んだ後、こくりと頷いた。
すると、ジェイドは苦笑いを浮かべて言った


貴方が、今の答えをわかるようになるまでは、私は待ちますから。


そのまま踵を返して去っていくジェイドを見ながら少女はふっとひとつ答えが浮かんだ。
けれども、まさかとその答えを取り消した。














とても短い時間で書いた文。



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07.02.17